居住用不動産の「譲渡損失」の「損益通算」および「繰越控除」制度

本題の特例のことを理解するためには、まず所得税のことを簡単にですが理解しなくてはいけません。 ※詳しい説明や計算については、税理士の先生にご確認ください。

まず所得税を計算する際に、10種類の所得に区分されます。

皆様が貰っているお給料は、「給与所得」、自営業の方の利益は「事業所得」、不動産の家賃収入は「不動産所得」などなど、所得の種類に応じて区分されています。

そして、不動産を売却した時に生じる所得は、「譲渡所得」と呼ばれています。
※詳しい説明や計算については、税理士の先生にご確認ください。

このように10種類に区分されている所得ですが、すべて利益が生じるとは限りません。

本題のように「損失」が生じる可能性もあるのです。
※区分によっては、「損失」という概念がない所得もありますのでご注意ください。(給与所得、退職所得等)

そこで、所得税の計算上、一定の区分の所得(不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得)の損失については、一定の要件のもと、他の所得から控除して計算することが認めれています。

これを「損益通算」と呼びます。



利益があると税金が発生するので、「損益通算」を行うことで少しでも税金を抑えることができるようになります。

ただし、本題の「不動産の譲渡所得」の損失は、同じ「譲渡所得」の区分内でも、「不動産の譲渡所得」からでないとそもそも損益通算できません。

「株式」などとの「譲渡所得」とは、同区分内(譲渡所得)でも通算が認められていないのです。このことが、本題の特例と大きく関係してきます。

したがって、分離課税で計算される不動産の売却益は、その年度内で別の不動産を譲渡して損失が出ていないと損益通算されないのです。

本特例は、本来なら個別に計算される不動産の「譲渡損失」が、一定の要件のもと、一定の他所得と損益通算することが認められる特別な制度なのです。 ※注 すべての所得ではないです。



皆様がお給料を貰っている場合、皆様の「給与所得」から「譲渡損失」を損益通算でき、さらにその「損失」額が所得を上回っている場合には、3年間繰越し続けることができるという制度です。

※3年も繰越するほどの損失は相当ですが、バブル期等に不動産を購入していればありうるかもしれませんね。


所得税のことを少し理解していただいたうえで、本制度を使ったケーススタディを見ていくことにします。